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女性のためのランニング学 PART II [買ったもの・欲しいもの]

本日はオフです。
昨日に引き続き、『女性のためのランニング学』 PART II :トレーニング のレビューをします。


6)トレーニングの構成要素

【内容】
有酸素トレーニング・閾値トレーニング・インターバルトレーニング他、各トレーニングの内容サマリーと、生理学的に何に刺激を与えて向上させるものなのか、という解説および試合前のテーパリングについて。


【感想】
ごく一般的な解説で、特に目新しいものはありませんでした。女性ならではの項目としては、「幼児がいる場合に、練習する時間を捻出する方法」というのがありましたが、「頑張って早起き」みたいなものに並んで、「トレミを買う」というのがあり、いかにもアメリカだと笑ってしまいました。


7)基礎体力作り

【内容】
長距離走の基礎づくり≒ビギナー向けの内容です。トレーニング量・ロング走・ヒル(坂道走)とファルトレク(野外走≒クロカンなど)など、練習の種類と、それぞれの目的を解説しています。


【感想】
この章は、ビギナー向けの内容でした。どのくらいまでをビギナーと呼ぶかについては、特に記載はありませんでしたが、次の章の「遅いランナーの例」が、10km50分とかで書かれていることを考えると、10kmレースで5'00/kmくらいまでを対象にしているという印象です。わたしの通っているRCでも、10kmのペース走を5'00/kmで行うクラスからが中上級クラスで、それ以下はビギナークラスなので、業界的にはそんなものなのかもしれません。

有酸素トレーニングに伴う細胞レベルの適応の多くは、トレーニングの強度ではなく量に左右されるのだそうで、ビギナーは、まずはペースはゆっくりでよいので、徐々に走行距離を増やしてランナーの体を作ることがスピード練習より優先順位が高いとのこと。ただし、すでに週40マイル(64km=月間256km)以上走っている場合は、増やしても伸びるとは限らないので慎重に、とのこと。
月間走行距離256kmというのは、わたしのいつもの月間走行距離とほぼ同じです。週64km以下のランナーは「ゆっくりでよいのでもっと走れば伸びますよ」ということだと思いますが、経験的にはなんとなく同意です。

ちなみに、距離は急に延ばさず、1日あたり1マイル(1.6km)程度延ばすのを4週間くらい続け、延ばす前は少し強度を落として回復期を作るとよいとのこと。また、距離の引き上げは、卵包期後半~黄体期中期くらいのタイミングで行うことが望ましく、黄体期後半~月経中は避けたほうがよいらしいです。あんまりそういうことを厳密に考えたことはなかったですが、確かに黄体期後半~月経中は距離を伸ばそうという気にはなりにくいですね。


8)アシドース閾値トレーニング

【内容】
前章(基礎体力作り)がビギナー向けだったのに対し、こちらはある程度基礎が整い(目安は5~10kmなら5'00/kmで走れる程度の走力)、フルマラソンで記録を伸ばしたいランナー向けの章となっています。
ここでは、アシドース閾値(ATペース)を正しくつかむこととそれをどれだけ引き上げられるかの重要性が語られています。
また、閾値の測定方法、閾値トレーニングの目的(有酸素領域で行えるランニングのペース向上)と、ワークアウトについての解説が、具体的な練習内容とセットで示されています。


【感想】
ATペースは、10km40分を切れないランナーの場合は、「5kmレースペース(または10kmレースペースより10-15min/マイル遅い)スピード」とありますが、これは「5kmレースペースまたは10kmレースペースより、10-15min/マイル遅いスピード」の誤植かなと思います。
エリートランナーの場合は、5kmレースペースより25-30min/マイル遅いスピード、または10kmレースペースより15-20/minマイル遅いスピードとありますので。

この「マイル」が基本単位なのがどうにも読みにくいですが、10-15min/マイル=6.2‐9.4min/kmなので、10km44-45分のわたしの場合、AT値は4'30~4'40/kmくらいと計算されます。5km・10km・ハーフ・フルマラソンのベストをダニエルズさんの計算機に突っ込んで算出されるわたしのTペースは4'29~4'37/kmなので、妥当かと思います。

記録を狙うなら、「長時間のきつい走りを快適にこなすことに慣れろ」と。ひぃ。その通りです。そして、そのためにはATラン(ATペースでの5km~10km走)をやれと。ひぃ。それもその通りです。
心拍で管理する場合ですと、アマチュアランナーの場合は、最大心拍の80-85%、エリートの場合は、85-90%くらいの強度のトレーニングだそうです。


9)VO2maxのための有酸素パワートレーニング

【内容】
VO2maxの測定方法、有酸素パワートレーニングの目的(遺伝的要素も大きいが、酸素を取り込んで使う能力=VO2maxを高めることはある程度可能)と、ワークアウトについての解説が、具体的な練習内容とセットで示されています。
VO2maxは、ものすごくばっくり言うと、どれだけ酸素を送り出して使えるかを示すものなので、たくさん走って毛細血管の量とミトコンドリアの量を増やすこと(使うほうの能力向上)と、心肺の能力をあげていく(送り出すほうの能力向上)ことの両面からアプローチできますが、この章は、後述のほうに焦点を当てています。


【感想】
こちらは、ダニエルズさんとかぶる内容がほとんどです。VO2max向上のためには、インターバル(強度MAXで3~5分の持続走、レストの時間で強度調整)が効果的、と。800m以上の距離のインターバルの場合は、レストはワークの時間と同じかそれ以下で、なるべく最初から最後まで、同ペースで。強度をあげるのはレースで結果を出してから、というのもダニエルズさんと同じです。

Iペースは、ダニエルズさんの計算機で算出可能ですが、こちらの本では、7-10分の全力走ペース(1.6ー3.2km)とのこと。
わたしの場合は、ダニエルズさんで計算すると、4'10/km前後で出てきます。このペースを維持できるのは、たぶん2kmくらいなので、こちらも妥当な値かなと思います。
最大心拍数的には、95%。心肺に負担をかける、たいへんきつい練習です。
月経周期の最初の週(排卵期一週目or黄体期一週目)が比較的適しているそうですが、わたしはこのへんがとても鈍感なので、よくわかりません。


10)スピードトレーニングと筋力トレーニング

【内容】
無酸素能力トレーニングについての章です。中距離~10kmくらいまでのレースでは、無酸素解糖の寄与がそれなりにあるので、無酸素能力トレーニングが大事になるとのこと。
この章では、無酸素パワートレーニング・プライオメトックトレーニング(=「筋収縮速度」を引き出すトレーニング)・筋力トレーニングについて解説されています。


【感想】
無酸素領域のトレーニングの目的は、(特に女性の場合は)、強くて形の良い筋肉を作ること。
パワーは、力(強さ)と速度(スピード)の積ですが、長距離走の場合は、パワーより速度を強化せよ、とのこと。確かに、ずっしりと重いキック力よりは、キックを生み出す速さ(筋収縮性の改善)のほうが大事ですね。
ただし、筋トレと持久系トレーニングは、生理学的変化は正反対。全体的な体力レベルが低い人(ビギナーや年配のランナー、一部の女性)にとっては有効だそうですが、総合的なランニング刺激(心肺特性や代謝特性を高める練習≒要するに走る練習)と天秤にかけて判断する必要があるとのことです。ベンチプレス100kgとフルでサブ3の両立はかなりの難易度ということでしょうね(笑)。

基礎づくりとしては、ジャンプ系のワークアウトが紹介されていました。
また、無酸素系のスピードトレーニングは、無酸素領域で45秒~2分の疾走。
筋トレ例としては、スクワット、ハムストリングカール、カーフレイズ、パワークリーン、デッドリフトが紹介されていました。ちなみに、筋トレはスピード系トレーニングとの相関性が高いので、有酸素持久系トレーニングの機関より、スピードトレーニングの段階で取り入れたほうがよいそうです。

コッコさんの場合は、下肢の筋肉量は人並みなので、もしかしたらこれ以上の筋トレはやらなくてもよいのかもしれません。
「流し」や「ラスト1km全力走」が無酸素系のスピードトレーニングに近い練習ですし、月曜日のドリルで、筋トレの一部はやっていますので。


11)トレーニングプログラム

【内容】
期分けプラン、回復、月経周期とレースについての解説です。


【感想】
これは、ごく一般的な内容でした。この本にも「トレーニングプログラムを組むにあたって、女性だけの秘密の方法などというものはない」って書かれていましたし(笑)。
男女共通の一般的なものに、女性ならではの事情(ホルモンの変動など)が組み込まれるという感じのようです。
女性のほうが、もろもろの事情でトレーニングプログラムの変更を強いられることが多いので、変更の方法をよりきちんとおさえておく必要があるというのには同感です。

フルマラソン以上の距離のレースを走るのに一番適した、筋グリコーゲンの貯蔵量がMAXになるタイミングは、黄体期中期らしいですが、このへんはちょっと実感がわかないのでなんとも……です。ただし、この時期は体温があがるので、体温の上昇や脱水を最小限にする工夫が必要とのこと。
レースのタイミングは選べないですし、体調もコンディションも100点のレースなんていうものはそうそうないですから、「与えられた条件の中で工夫して、そのときできる最大のパフォーマンスをする」ほうに主眼を置いて、練習や当日の工夫で対策したほうがよいのではないかと個人的には思いました。


案の定、長くなりました。
PERT Ⅲは、追ってまた。


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るみおかん

素晴らしい!
なんとコンパクトにポイントを押さえたサマリー(笑)
私だとついつい脱線しまくってしまいそうww
コッコさん絶対仕事できる人ですねw
本が届くのが楽しみです(^o^)

筋トレについてはやっぱりマラソンとトライアスロンは違うなあ。当たり前ですが。筋肉が落ち続ける女性は年間通じて筋トレしましょうって言われてます。

黄体期中期に筋グリコーゲンMAX!なるほど!
浮腫が始まり身体が水を捉えて離さない感じがあります。
グリコーゲンが増えるのと関係していたんだなあ。
生理一週間前くらいですよね。このタイミングでレースが来たら私は一番嫌ですね〜。生理中より嫌だ。

いやあほんと、この本ネタに3時間くらい飲めそうですねww
by るみおかん (2015-10-08 04:45) 

みゃーこ

なんと、もうパート2が。本当にすごいです。朝起きて、見てみたら更新されていて、びっくりです。ありがとうございます。キロ5分どころか6分でも苦しい、鈍足初心者の私にはあまりにも、内容が高度で、たぶん一生ご縁がなかったであろう本。でもおかげさまで、知らなかった知識、知らなかった世界にふれることができました。感謝です。ちなみに、コメントはしなかったけれど、いくらの醤油漬け、ブログを読んで、参考にして3回も作ってしまいました。美味しかったです
by みゃーこ (2015-10-08 05:38) 

コッコ

>るみおかんさん
筋トレは、こと長距離走にのみ限って言えばなかなかデリケートな問題だと思います。個人的には、それなりに走っていればランに必要な筋肉はつくし、筋トレよりもコアトレのほうが優先順位が高いのではないかと思っているのですが。
この本は、いったん読了していたのですが、レビューのためにさらっと再度斜め読みしたら、初読では見落としていた新たな発見もありました。いろいろ、お話したいです。大阪マラソンのアフターでお会いできるのを楽しみにしています♪
by コッコ (2015-10-09 00:29) 

コッコ

>みゃーこさん
いったん全部読み終わってはいましたので。レビューのために、さらっと再度斜め読みして要点を整理しただけです。
みゃーこさん、5'00/kmで10kmの実力は余裕でおありですから、充分アドバンスのほうでトレーニングなさってよいと思いますよー。
P.S.イクラの醤油漬け、ご参考になったみたいで嬉しいです。わたしは、まだ1回しかやれていませんが、シーズン中にもう1回くらいは作りたいです。
by コッコ (2015-10-09 00:34) 

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