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女性のためのランニング学 [買ったもの・欲しいもの]

先日、『女性のためのランニング学』という本を買いました。初版は2014年2月。運動生理学者のジェイソン氏と、スポーツ医学者のキャロリン医師の共著の翻訳を、スポーツ健康学教授の木下氏が監修されたものです。

「女性のためのランニング」というと、「走ってキレイになる!」みたいなものが多いのですが(個人的にはそのへんは割とどうでもよい)、この本は、「生理学・解剖学的に、女性は男性とは違うので、女性の体のことをよく知って、それに即した方法で練習し、怪我やトラブルを回避して強くなろう!」という趣旨の本です。

女性ランナーとして一読の価値はあるかなと思いますが、エネルギー生成と運動生理学の基本、「人体は、ATP分子が分解される過程で放出されるエネルギーを使って運動している。ATPはADPとPiに分解され、それが再結合してATPとなる。人体のエネルギー供給には、ホスファゲン機構、解糖(無酸素)機構、酸化(有酸素)機構があり、それぞれの特徴は……」といった感じではじまるので、面白く読めるかどうかは好みが分かれるところかと思います。

また、割とずっしりした本なので(ダニエルズのランニングフォーミュラーレベル)、置いてある書店も限られると思います。書店で実物を斜め読みして購入を決めるのは難しいかもしれませんので、簡単に章ごとの内容を感想とセットでレビューします。
「簡単に」とはいっても結構長文で恐縮ですが、ご購入の参考になればと思います。

女性のためのランニング学.jpg

まずは目次。

PART I  生理機能
 1 成績影響因子と性差
 2 月経周期とホルモンと成績
 3 妊娠
 4 閉経期
 5 年配のランナー
 
PART II  トレーニング
 6 トレーニングの構成要素
 7 基礎体作り
 8 アシドーシス閾値(乳酸閾値)トレーニング
 9 VO2maxのための有酸素パワートレーニング
 10 スピードトレーニングと筋力トレーニング
 11 トレーニングプログラムを組み立てる
 
PART III  健康と安全
 12 女性アスリートの3つの落とし穴
 13 けがと女性ランナー
 14 栄養と女性ランナー


今日は、『PART 1:生理機能』のレビューをします。

1)競技能力と性差

【内容】
運動生理学の基本の解説と、ランニングのパフォーマンスに影響する心血管因子・筋因子・代謝因子の基本の解説。それを踏まえ、性差が競技能力やトレーニングにどう影響するかについて。


【感想】
心血管因子・筋因子などほぼすべてにおいて男性優位だが(体格やホルモンに起因)、代謝因子において、VO2max65%程度のランニングの場合、男性より女性のほうが脂肪代謝依存率が高いため、疲労の開始が遅いという話が面白かったです。超意訳すると、「女性のほうが、脂肪代謝依存率が高い=体内に有限にしか蓄えられないグリコーゲン消費を節約できる=マラソン後半でバテにくい」ということなのかなと。「マラソンの後半で歩いているのはたいてい男性で、女性は淡々と走り続ける」というのも、性格的な性差だけの話ではないんだなあと思いました。実際、世界記録同士で比較しても、5,000mだと12.4%ある開きが、フルマラソンで9.5%、100kmだと5.3%と、距離が延びるほどに性差が縮まるんだそうです。


2)月経周期とホルモンと競技能力

【内容】
月経周期の各期の解説、それぞれの際、生理機能への影響がどうなっており、競技能力へどう関係してくるかという解説。


【感想】
女性ならではの内容で、とても面白かったです。月経周期の各期の解説はごく一般的な内容で、生理痛やPMSの緩和については特に目新しい話はなかったのですが、「黄体期は体温が高く、運動中も高いままなので、発汗→放熱のはじまる体温も高く、暑い時期のランニングにおいてパフォーマンスが低下しやすい時期、熱中症にもなりやすいので注意。」というのは目から鱗の話でした。夏はどんなランナーでもパフォーマンスがあがりにくいものですが、女性は月経周期のタイミングでも変わるんですね。わたしの周りでも、「暑い時期は本当にダメ」という女性ランナーが複数います。黄体期は月の半分(約14日)を占めるので、女性は男性以上に暑さに対して不利な状況にあるようです。


3)妊娠

【内容】
妊娠中の生理的影響と、妊娠中の適度な運動の利点と避けるべき強度の解説、産褥期と授乳期についても同様。


【感想】
ここは対象外なので(笑)、サラリとしか読めていませんが、妊娠中どの程度の運動ならOKなのかとか、出産後運動強度をあげていくときのガイドラインが、生理学的影響とともに記されているのをフムフムと読みました。妊娠出産に直面している女性ランナーにとっては貴重な情報かと思います。他に、こんなことまで解説している本を読んだことないですし。個人差は当然あるので、あくまで基本情報であり、最終的には自分の体と対話しながらになるとは思いますが、知識として知っておいて損はないと思いました。


4)閉経期

【内容】
閉経期の生理的変化と、それがランニングのパフォーマンスにどう影響するか。トレーニングの際に考慮すべきこと。


【感想】
閉経期の体の変化として、いくつかポイントが挙げられていましたが、興味深かったのは心臓リスクについてです。閉経期前だと、心臓リスクは女性よりも男性のほうが高いそうですが、閉経期では女性も2~3倍にリスクが跳ね上がるとか。また、骨破壊も生理学的に進みやすいそうで、骨折に注意が必要な時期というのも興味深かったです。


5)年配のランナー

【内容】
加齢による生理的な変化についての解説、年配のランナーがトレーニングしたときの効果。


【感想】
まずは加齢がパフォーマンスにどう影響するかを運動生理学的に解説していて、一般論としてとても参考になります。加齢による実際のパフォーマンスの変化を統計学的な指数として示したものは、ダニエルズさんの第三版に載っていますが、その根拠のひとつとして面白く読みました。心肺機能、筋肉量と強さ、柔軟性、体組成、骨量、体温調節機能、姿勢の安定性、それぞれが加齢によってどの程度衰えるのか、男女の差などが記載されており、女性が特に気を付けなければならないポイントがわかります。
ストライドに影響する下肢の筋力は、最初はゆるやかに、50歳から男女ともに急速に低下するそうですが、男性より女性のほうが大きく落ちるそうです。……が、幸い、筋肉は積極的な筋力トレーニングに反応するので、ちゃんとトレーニングすれば相殺できるとのこと。とても安心しました。


……なんか、つらつら書いてきて自分でも疲れてきたんですが、これ、PART II 以降のレビューも需要ありますかね?(汗)

あ、本日の練習は、ジョグ10km+WS×4でした。
それから、今日はこんな本も買いました。どっちも完全に趣味の世界(笑)。

その他買った本.jpg


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みやーこ

パート2、3とも待ってます。買わないでいいとこ取りで申し訳ないけれど。年配ランナーです。でも他のパートも読んで楽しかったです。後編もよろしくお願いします
by みやーこ (2015-10-07 05:57) 

コッコ

>みやーこさん
パート1は解説メインで実践に活かせる内容は少ないのですが、2と3は実践メインになります。
わたし視点でのまとめと感想になりますが、トピックスをお伝えしますねー。うまく纏められるかなあ…。
by コッコ (2015-10-07 12:13) 

るみおかん

おもしろそーー!!
買おうっと!

月経周期については以前相当調べました。
実際黄体期後期は全然走れないので、レースエントリーする時もざっくり計算してからしてます(笑)
by るみおかん (2015-10-07 13:28) 

みゃーこ

簡単に、パート2も3も待ってますなんて言ってしまいましたが、纏めてアップするのは、時間も労力も大変ですよね。
私も、買うことにします。実践となったら、纏めるのも大変。本買って、実際みながら、参考にしてみますね。ありがとうございます
by みゃーこ (2015-10-07 16:04) 

コッコ

>るみおかんさん
るみさんは、絶対好きだと思います。(*^o^*)
洋書の翻訳モノですし、ダニエルズさんの理論とかぶる内容も多く、かつ部分的に日本の環境とはなじまなかったりもしますが、それを除いても面白いです。
わたしは月経周期に対しては「毎月ちゃんと来てるか」くらいしか注意を払っておらず、心拍についての理解も浅いので、このへんは特に、るみさんの感想が聞きたいです。
あーあ、お住まいが近かったらなあ。るみさんとは、この本をネタに3時間くらいは余裕で語りあえそうです(笑)。
by コッコ (2015-10-07 18:56) 

コッコ

>みゃーこさん
いえいえ、纏めなおしてアップするという作業は、自分の言葉に落ちるまで咀嚼しなおすということなので、わたしにとっても有意義なことなんです。
ですがですが。長文になりますし、内容も若干カタイですし、はたして需要があるのだろうかと、それだけが心配で。(あとは、わたしは素人なので、曲解・誤解をしてレビューしてしまわないかというのも心配です。)
でも、ひとりでも読んでくださるなら書きますよ~。
by コッコ (2015-10-07 18:57) 

あおmama

コッコさん、またまた久しぶりです!
「女性のためのランニング学」の妊娠のパート、産後の私にとってはとても気になる部分です。買って読んでみようかなと考え中です。産後の私はどこまでやって良いのかフルに向けて暗中模索しながらの状態なので…。
それにしても、簡潔にまとめるコッコさん、さすがです。
by あおmama (2015-10-09 12:35) 

コッコ

>あおmamaさん
お元気ですかー? 妊娠出産の章、産褥期の運動については、出産状況や回復に個人差があるから、自分の体と医師に相談の上、徐々に強度をあげましょうという感じで、そんなに有益なアドバイスはなかったです。
授乳中はふだんより+500kcalを意識することと、カルシウムの摂取をこころがけること。また、最大強度で運動すると母乳の中にラクテートが増えるそうです。乳児への影響があるものではないけれど、母乳の味には影響するようで、嫌がる子が多いそうです。運動前に授乳するか、運動後1時間以降に。
締め付けの強すぎるブラは、乳腺炎になることがあるので注意。……くらいの内容でした。
by コッコ (2015-10-09 18:45) 

あおmama

コッコさん、またまた簡潔にまとめていただきありがとうございました。
参考にさせていただきますね。
by あおmama (2015-10-09 19:35) 

コッコ

>あおmamaさん
いえいえー。徐々に戻して、東京マラソン頑張ってくださいね! 応援に行きたいと思っています♪
by コッコ (2015-10-09 22:18) 

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